1.書籍概要
- 書籍名:湖池屋の流儀(老舗を再生させたブランディング戦略)
- 著者名:佐藤章
- 出版社:中央公論新社
- 価格 :1,600円+税
- 発行日:2023年12月25日 初版発行
【書籍帯コメント】
- 安売り市場なんか、一切見るな
- 安売り競争で苦戦を強いられていた日本におけるポテトチップスの開拓者が、社の威信をかけた「プライドポテト」で起死回生のV字回復
- 「働いてみたい注目成長企業」1位に選ばれた老舗の付加価値経営とは
- 業界で最高のものをつくれ
- 高くても買ってもらえる品質をめざせ
2.読書感想文
①全体所感
佐藤氏がキリン→湖池屋と渡り歩く中で、どのように商品を、企業をブランディングしていったのか。そして大成功の裏側には何があったのか。それを追体験ができる。格言的な言葉は少な目であるが、その分、精錬されていと感じた。
ハウツー本を求めている人には向かない内容だが、ハウツーを読み取ることは可能。読み取ることができたのであれば、あとは実行あるのみ。これが難しいことなのだが、佐藤氏はやり抜いている。そのことが、心の支えになるかもしれない。追体験を通して、自分に伴走してもらうイメージで読むのも良いと思う。
知識、テクニック、育ったバックボーンなど、成功には様々な要因が絡み合うことが、この書籍から読み取れる。その内容から、どのような成功にも共通する事項が見えてきた。その共通点は「情熱」である。
情熱なくして、企業の、プロジェクトの、商品の成功はあり得ない。情熱の裏側には、計り知れない努力がある。いや、情熱があるからこそ努力できるのだろう。リーダーにとって、情熱は不可欠な要素である。言葉で明確に記載されているわけではないが、読み進めていくと、肌で感じることができるだろう。そして、情熱は伝染する。私にも、この書籍を手に取ったあなたにも。
②本書から学んだこと(フレーズ)
- 企業がめざすのは、会社内を変えることではなくお客様への提供価値を変えていくこと。その原動力となるのは他でもない、我々社員一人ひとりの主体性です
結果を見れば会社内が変わるのだが、どちらが先なのか?そのきっかけは何だったのか?と問われれれば、顧客を主軸に、邁進したからこそ、情熱をもって取り組んだからこそであろう。
動機が不純であれば、良い結果が出てもその影響は目に見えるものだけに限られる。例えば売上数値とか。それ以上に組織を変えるためには、純粋な心で作られたミッションなのだろう。そのミッションが顧客主義だったのだろうと思う。そのミッションを達成するべく、組織の一人ひとりが変わったのではないだろうか。
- 新しいアイディアや商品というのは、何も突飛なものではなく、先人たちの知恵を生かしながら、イノベーションをつくっていくのだ
「活かす」ではなく「生かす」であることに注目したい。創業者の言葉を大切に、変化の大きいこの時代にも、その言葉を「生かす」のである。別の言葉で言えば「原点回帰」が適切だろう。原点回帰の難しいところは、その原点を理解しなければならないこと。真の意味で。
言葉だけではない、想いを受け継ぐというのは、並大抵の努力では到達することはできない。そして、創業者と雇われのサラリーマンとは、圧倒的に思考がことなる。「生かす」、この言葉の意味はとても深いと感じた。
- ヒット商品こそが社員のモチベーションをあげ、会社を伸ばしていくすべての核となる
メーカー勤務の私にとっては、当たり前のことであるが忘れていたことである。この純粋な気持ちを忘れてしまったメーカーに残された道は、倒産という現実だろう。ヒット商品は売上や利益のためではなく、顧客のためにあるものだ。
良い商品は高くても売れる。顧客も求めているからだ。世の中を良くしよう。顧客を笑顔にしよう。こういう想いを胸に、より良い商品を開発していこうと思う。
- お客様に対して驚きと発見、感動をもたらさないことには、市場は動きません
驚き、発見、感動。そのためには相手をよく知らなければならない。机上の空論、思い込みではこの域には到達できないだろう。顧客との対話がなければならず、そして、徹底して顧客の声を聴かなければならない。
聴いて、理解し、実行し、実現し。市場を大きく動かすには、その覚悟が必要。しかし、佐藤氏から勇気をもらえた気がする。
- 人の言葉を受け止める力、聞く力はいま改めて大切になっている
対顧客もそうだが、それと同レベルに組織内で求められている。人ひとりでできることには限界がある。チームとして動かなければ大きな仕事はできず、大きな成果も得られない。組織を動かすことができないのならば、市場を動かすことはできないだろう。
一番身近な、自らが勤める組織を動かすこと。まずはそこから始めよう。そのためには、関係各署の声に耳を傾けよう。話を聞いてもらえない人間の意見など、誰も受け入れようとしないのだから。
- 会社は社長の人格より大きくはならない
中小企業で働く身分の人間としては、非常に恐ろしい言葉である。多くの企業でよく見かける「二代目社長」。二代目社長が会社を悪くする、下手をすると倒産に追い込まれるということを目にしたことがある。もちろん上手に経営して、さらに発展させる二代目社長もいる。
選ぶ側にも責任はあるだろうが、選ばれた側にも責任がある。会社を大きくしたい、維持したいのであれば、今以上に人格を磨き上げる努力を続けなければならない。
これからも、多くの書籍を読み、学び、実践をして、少しずつ自分を磨いていこう。
3.お知らせ
筆者はリタイア60の名前でSNSをはじめとした発信活動を行っています。ご興味がある方は是非ご覧ください。