1.書籍概要
- 書籍名:人を動かす・新装版
- 著者名:D・カーネギー 山口博【訳】
- 出版社:創元社
- 価格 :1,500円+税
- 発行日:2013年7月10日 第1版第81刷発行
【書籍帯コメント】
- 社会人として身につけるべき人間関係の原則を具体的に明示して、あらゆる事故啓発本の原点となった不朽の名著
2.読書感想文
①全体所感
この書籍を読むことで誰しも思い当たる出来事があり、反省をする場面に出くわす。それは悪いことではなく、むしろ今気付くことができたことに喜ぶべきだと思う
人生100年時代と言われる昨今。「今日から変わろう」と決心することに遅すぎるということはない。思い立った時に行動する事で人生は180°変わることだろ。
また、今までの失態に対してお詫びをしたい気持ちにもなる。しかし、歳を重ねるほどお詫びというのはやりにくくなるもの。さらに、それがかなり昔に遡るようなものなら尚更だ。その気持ちを自分を変える原動力にしよう。変わった姿を見せること、二度と同じ過ちを犯さないことが、相手にとっての最高のお詫びになるだろう。
この書籍そのものが読者を動かす最高傑作である。
②本書から学んだこと(フレーズ)
PART1 人を動かす三原則
1.盗人にも五分の理を認める
- 他人のあら探しは、なんの役にも立たない。相手は、すぐさま防御体制をしいて、なんとか自分を正当化しようとする。(P.14)
- 人を非難するのは、ちょうど天に向かってつばをするようなもので、必ずわが身にかえってくる。(P.19)
- 他人を矯正するよりも、自分を直すほうがよほど得であり、危険も少ない。(P.25)
- 相手は感情の動物であり、しかも偏見に満ち、自尊心と虚栄心によって行動する。(P.27)
- 人を非難するかわりに、相手を理解するように努めようではないか。(P.32)
相手に欠点がある場合に、相手を非難することは至極簡単なこと。しかし、それによって相手が考えを改めたり、欠点を正したりすることはない。つまり、非難は不幸へ向かうためのエネルギーでしかない。
マウントを取りたくなることが日常生活である。完全勝利でマウントを取れた場合、相手は何ひとつ嬉しいことはない。むしろストレスであり、恨みすら持つだろう。そこから争いがうまれることもある。
2.重要感を持たせる
- 人間の持つもっとも根強い衝動は、"重要人物たらんとする欲求"だ。(P.34)
- 他人の長所を伸ばすには、ほめることと、励ますことが何よりの方法だ。(P.42)
- やさしいほめことばは、夜明けの星のかなでる音楽のように、いつまでも記憶に残り、心の糧になる。(P.44)
貶されて嬉しい人間はいない。かと言って、心にもないお世辞を並べても見透かされ、相手には響かない。つまり、それは心からの賞賛や感謝でなければならない。
部下育成の場面を思い出した。うわすべりした褒め言葉や励ましでは動いてはくれなかった。しかし、心底驚き、尊敬の意味も込めて褒めた時、共に壁を乗り越えるために励ました時、言葉そのものは簡単なものだったが、想像以上の力を発揮してくれた。
3.人の立場に身を置く
- 人を動かす唯一の方法は、その人の好むものを問題にし、それを手に入れる方法を教えてやることだ。(P.51)
- 成功に秘訣というものがあるとすれば、それは、他人の立場を理解し、自分の立場と同時に、他人の立場からも物事を見ることのできる能力である。(P.57)
同じテーマで話をしていても、見ている現在、見てきた過去、見たいと思う未来は必ず自分とは異なる。そのため、相手を理解するには想像力が必要だ。
仕事における他部署との交流の場面がイメージしやすかった。相手の状況を、完璧ではないにしろ想像力を働かせ、理解することに努める。少しは理解されたと相手に思わせることができれば、お互いの相違は埋まりやすくなる。
PART2 人に好かれる六原則
1.誠実な関心を寄せる
- 友を得るには、相手の関心を引こうとするよりも、相手に純粋な関心を寄せることだ。(P.74)
- われわれは、自分に関心を寄せてくれる人々に関心を寄せる。(P.88)
ビジネスにも恋愛にも通じること。下心があっては見透かされるし、言葉巧みに相手を引き寄せることは、相当なペテン師でない限り無理だろう。
こちらのことを熱心に思っての発言かどうか、話の内容「だけ」で判断することは少ない。態度や抑揚、言葉尻など、その判断に多くの情報を利用している。それらを意図的に作り込むの至難の業。誠実な態度や言葉には敵わない。
2.笑顔を忘れない
- 動作はことばよりも雄弁である。(P.92)
- 正しい精神状態はすぐれた創造力をそなえている。(中略)人間は、心がけたとおりになるものである。(P.100)
気持ちの持ちようで自分の周りを変えることができる。気持ちが先か、動作が先かは分からないが、どちらかをコントロールできれば自分の願った通りになる可能性は高くなるは。
楽しく前向きに仕事をしていると、自然と売上も上がってきた経験がある。ギスギスと必死に売り込むよりよほど効果的であった。
笑顔を絶やさなければ、いつしか気持ちもにこやかになるだろう。
3.名前を覚える
- 人に好かれるいちばん簡単で、わかりきった、しかもいちばん大切な方法は、相手の名前を覚え、相手に重要感を持たせること。(P.113)
この世で唯一無二で、その人を認識できるのが名前。名前を覚えてもらうことは、存在そのものを肯定されたこと。
私の本名の漢字は読みにくく間違えやすい。しかし、高校の卒業式で、フルネームで読み方を間違えることなく呼ばれたのは嬉しかった。40歳を過ぎてもその喜びを覚えている。
ここ最近流行しているキラキラネームも同様だろう。きっと正しい読み方で呼ばれたら嬉しく
4.聞き手にまわる
- あなたの話し相手は、あなたのことに対して持つ興味の百倍もの興味を、自分自身のことに対して持っている。(P.129)
居酒屋の席で見かける光景。酒に酔い、愚痴を延々と話す人がいる。それを笑顔で相槌をうちながら聞いている人がいる。話している方は気分が良いだろう。
作り笑顔ではなく、真に興味を持って聴くことで、この人は良い人だ、と話し手は感じる。そして関係性が良好になる。飲みニケーションはそういう場でもあると考えると、注意すべきは、相手のことを想像せずに、延々と話し続ける人間にならならないことだ。
5.関心のありかを見抜く
- 人の心をとらえる近道は、相手がもっとも深い関心を持っている問題を話題にすること。(P.130)
営業活動で感じる時があった。必死に売り込んでも売れない時は売れない。商品が悪いわけではない。説明が悪いわけでもない。逆に、売り込む気がなく、世間話をしただけの時に大きな注文を受ける時がある。そういうことなのだろうなと感じた。
6.心からほめる
- 相手が相手なりの世界で重要な人物であることを率直に認め、そのことをうまく相手に悟らせること。(P.144)
どんな人であれ、必ず何か秀でたものがある。それは自分の知らない世界での場合が多い。自分の価値観、世界観だけで相手を判断してはいけない。
自分に何か秀でた能力があり、それを他人と比較して良し悪しを決める時代が私にはあった。全く無意味なことだ。
自分と全く同じ世界にいる人間はひとりもいない。比較することに今はなく、むしろ負の感情をうむ可能性が高まるのみである。何かを相手の中に見つけたら、躊躇なく褒めることが大切だと感じた。
PART3 人を説得する十二原則
1.議論をさける
- 正しきがうえにも正しき議論をいくらしたところで、相手の心は変えられない。その点、正しからざる議論をするのと、なんらちがいはない。(P.162)
- 意見の不一致を歓迎せよ。(P.164)
意見が異なる相手に、自分の意見を押しつける議論をしても意味がない。仮に議論に勝ったとしても、心から納得する相手はいない。それならば相手との共通項を探し、共に打開する道を歩むのが良い。
社内会議で思い当たる節がある。会社のために考え抜いた自分の意見は正しい、間違いはない、私は誰よりも考え抜いた、ということは、その行動として正しいが、議論の場に持ち込む意味はない。異なる側面から相手も同じように考えているだろう。そう考えれば、共通項を見つけ出し、それに対して組織を動かすべきだった。
2.誤りを指摘しない
- たいていの人は偏見を持ち、先入観、嫉妬心、猜疑心、恐怖心、ねたみ、自負心などにむしばまれている。(P.171)
- 嘲笑や非難で意見を変えさせることは不可能だ。(P.174)
ストレートに指摘することは反感しか生まない。どんなに正しいことでも、その受け取り方は相手次第なる。恥をかいた、悔しいなど、負の感情がうまれることは容易に想像できる。
しかし、正義感というか、不要なプライドで、多くの社員の前で誤りを正すことを実生活でやってしまった。指摘することで得意になった。これは、自らの器の小ささを見せる恥ずかしい行為なので、今後は気をつけることにする。
3.誤りを認める
- 自己の過失を認めることは、その人間の値打ちを引き上げ、自分でも何か高潔な感じがしてうれしくなるものだ。(P.189)
負けるが勝ち。言い訳をすればするほど立場は苦しくなる。相手は自分に対して過失を認めさせたいのだ。言い訳で立場が変わることはほぼないだろう。
言い訳をしている姿ほど見苦しいものはない。濡れ衣はまた別の話である。相手を変えるより自分を変える方が楽なのだから、冷静に見極めた上で過失を潔く認めよう。
4.おだやかに話す
- 人をむりに自分の意見に従わせることはできない。しかし、やさしい打ちとけた態度で話しあえば、相手の心を変えることもできる。(P.196)
- 決して高圧的ないい方はしない。自分の意見を相手に押しつけようとはせず、おだやかな、打ちとけた態度を示す。(P.198)
- 太陽と北風が腕くらべをする寓話。(P.202)
- 親切、友愛、感謝は世のいっさいの怒声よりもたやすく人の心を変えることができる。(P.204)
尊敬する上司からいつも指摘されていた内容。心に突き刺さる内容であり、かつ、心当たりがありすぎて後悔ばかりが頭をよぎる箇所だった。
なかなか変わらない、変わることができない自分にもらったアドバイスが、能ある鷹は爪を隠す、であった。違った角度から変えさせようとしたのだろう。成果を出すことで自分の発言力の高まりに天狗になってしまった。
自分にはそんな気がなくても、受け取るのは相手である。高圧的な態度になっていたのだと思う。二度と同じ過ちは犯さないよう、ここからが第二の人生のスタートだ。
5."イエス"と答えられる問題を選ぶ
- 相手の立場で物ごとを考えることは、議論をするよりもかえって興味があり、しかも、比較にならぬほどの利益がある。(P.210)
議論は大抵の場合、言い争いになる。一見穏やかに議論を終えたと思っても、相手の心の中までは見えず、笑顔の裏に怒りがあるかもしれない。
相手の立場になることは、全てを受け入れるということではない。こちらがコントロールする術を持つことだ。つまり、否定せずに誘導すること。否定した時点で、議論がスタートする。これが実生活の中では難しいのだ。
6.しゃべらせる
- 敵をつくりたければ、友に勝つがいい。味方をつくりたければ、友に勝たせるがいい。(P.218)
自分が相手に勝つことで得られるのは快楽のみ。相手は劣等感や嫉妬の念を抱く。自分が得るものより、相手のマイナスで得るものの方が多い。明らかに損だ。
それなら、これを逆にすれば得をするということだ。自分が劣等感や嫉妬の念を抱かなければ、プラスはさらに大きくなる。相手を認め、話を聞き、肯定しよう。大きな財産になるはずだ。
7.思いつかせる
申し訳ございません。ここはひとつもありませんでした。
8.人の身になる
- 自分の意見を述べるだけでなく、相手の意見をも尊重するところから、話し合いの道が開ける。(P.231)
自分の意見や気持ちだけを、好き勝手に話すのは確かに気持ち良い。しかし、これは話し合いでも何でもない。話し合いというのは双方の意見や認識が食い違う時に、すり合わせるために行うもの。つまり、本来の目的を見失ってはいけない。
WEBセミナー話者の際に、多くの参加者に対して興味を引き出して、最後まで熱心に聞いてもらうにはどうしたらよいかを試行錯誤した時期があった。当時はコロナ禍。WEBセミナーは動画視聴に近しいものがある。そのため、徹底してYouTube動画を研究した。聞き手の立場に立つために徹底した。
9.同情を持つ
申し訳ございません。ここはひとつもありませんでした。
10.美しい心情に呼びかける
- 人をごまかすような人間でも、相手に心から信頼され、正直で公正な人物として扱われると、なかなか不正なことはできない。(P.252)
恋愛でも思い当たる節がありそうな内容。相手から心底愛されると、裏切った際に自分の心に大きな罪悪感がうまれる、これが一番イメージしやすい身近な事柄だろう。
仕事においても、担当顧客から信頼を勝ち得ると、その顧客を裏切ってはいけないと、より懸命になった経験がある。この逆の立場を応用することなのだろうと感じた。
11.演出を考える
申し訳ございません。ここはひとつもありませんでした。
12.対抗意識を刺激する
申し訳ございません。ここはひとつもありませんでした。
PART4 人を変える九原則
1.まずほめる
- まず相手をほめておくのは、歯科医師がまず局部麻酔をするのによく似ている(P.274)
非常にイメージがしやすい。褒められて嫌な気持ちになる人は少ない。あからさまなゴマすりであれば見抜かれるだろうが、真に思うところがあれば、誉めるべきだろう。
私がよくやる過ちは、議論の場で出てきた意見を叩き潰してしまうこと。そもそも、議論の場で意見を出すこと自体、素晴らしいこと。考えがあるからこそ、真剣だからこそ意見が出せる。それを考えずに行動していた自分が恥ずかしい。まずはその意見を受け止め、意見を出したこと自体を褒めることをやろう。
2.遠回しに注意を与える
- 「しかし」ということばを聞いたとたん、今のほめことばがはたして本心だったのかどうか疑いたくなる(P.277)
「しかし」は逆接の接続詞。つまり、前のことを否定する意味が含まれてしまう。何気なく、当たり前のように利用している言葉。同類の話し言葉に「でも」がある。「でも」に続く言葉は、その前の相手の話を否定することから始まっている。
昔、尊敬する上司に「でも」は使うなと言われたことを思い出した。「しかし」も同じだろう。もし使うのなら、相手に対してではなく、自分に対して使うようにすべきだ。日頃から意識していこう。
3.自分のあやまちを話す
申し訳ございません。ここはひとつもありませんでした。
4.命令しない
申し訳ございません。ここはひとつもありませんでした。
5.顔をつぶさない
- 自分の気持ちを通すために、他人の感情を踏みにじって行く。相手の自尊心などは全く考えない。人前もかまわず、使用人や子供を叱りとばす(P.291)
- 相手の人間としての尊厳を傷つけることは犯罪なのだ(P.294)
仕事だけでなく私生活でも思い当たる節がある。仕事では「自分が一番正しい」という思い込み、それに見合うだけの調査や準備が逆に仇となるケースが多かった。精神的に幼かったのだろう。
自分の意見が誰かより秀でているかどうかを決めるのは自分ではなく他人。その他人をコントロールすることは困難を極める。自分自身さえコントロールできないのだから。遠慮は必要ないが、他人を傷つけてはいけないのだ。相手を潰しても、自分が正しいということにはならないのだから。
6.わずかなことでもほめる
- われわれには、他人から評価され、認められたい願望があり、そのためにはどんなことでもする。だが、心のこもらないうわべだけのお世辞には、反発を覚える(P.300)
人間関係を重視するがあまり、心にもないことを言っても相手には伝わらない。仕事をしていると、ゴマすりをする人間を見かけることがあるが、まさにそれだと思う。相手を尊敬せずに出る言葉に価値はないと言っても良いだろう。
相手を褒めるなら、具体的に褒める、つまり、誉めた部分を説明できることが大切だろう。直感的に相手を凄いと感じることもあるが、それを自分の言葉で相手に説明できれば、最低限ではあるが心は伝わりやすくなるはずだ。注意として、くどくどと説明することが無いようにしよう。
7.期待をかける
- 自分について良い評価が与えられた以上、その評価にたがわないようにつとめるのは人情である(P.305)
貶されて嬉しい人はいない。高い評価をしてもらえれば、それに、いやそれ以上の期待に応えるように人は動くという。
自分の経験では、これにも注意が必要だと思う。その高い評価は本物のなのか?相手の心は分からないもので、もしかしたら煽てているだけかもしれない。常にその考えは持っておきたい。すると、前段に記載した「尊敬」が含まれた期待なのかどうかを見抜く必要がある。つまり、自分が相手に高い評価を与える時には「尊敬」が必要だということ。相手の立場になるとよくわかることだ。
8.激励する
- 大いに元気づけて、やりさえすれば容易にやれると思い込ませ、そして、相手の能力をこちらは信じているのだと知らせてやる(P.310)
これにも注意が必要ではないかと思う。その行為は、恐らく明日からでもすぐにできるだろう。あくまで「行為」ということ。「演じる」という選択をする場合、これは危険を伴う。やはり相手に対する「尊敬」が根底にないと失敗する。
大切なのは行為や発言だけでなく、その根っこにある「心」。もちろん表面上の言葉だけで簡単に動く人間もいるかもしれない。しかし、より多くの人を動かしたいのならば、「心」が大切なのではないか。失敗やリスクを排除するのが自分の心。それを磨く日々を過ごさなければ。ああああああああああ
9.喜んで協力させる
- 誠実であれ(P.319)
- 相手の利益だけを考えよ(P.319)
- 相手の身になれ(P.319)
テクニカルなことは本書以外にも様々書かれている。しかし、本書を通して一番響いたのは「自分の心の在り方」である。人を動かすことは難しいこと。それならば自分をまず動かしてみたはどうだろうか。
自分を変えることができれば、自分の周囲の世界は驚くほど変わると信じてい。行動を変え、心の在り方を変える。そのためには、本書をことあるごとに読み返してみよう。そして、この記事が、必要と思われる箇所への道しるべとなるはずだ。
3.お知らせ
筆者はリタイア60の名前でSNSをはじめとした発信活動を行っています。ご興味がある方は是非ご覧ください。