1.書籍概要
- 書籍名:温かいテクノロジー
- 著者名:林要(GROOVE X創業者・CEO)
- 出版社:ライツ社
- 価格 :1,900円+税
- 発行日:2023年5月20日
【書籍帯コメント】
- ロボットを開発することは、「人間」を知ることだった
- AIの見え方が変わる
- 人類のこれからが知れる、22世紀への知的冒険
- 世界初の家族型ロボット「LOVOT」の開発者が語るChatGPTだけでは見れない世界
- その進化は、人間をみつめているか
2.読書感想文
①全体所感
林氏は、LOVOTを開発する上で多くの「問い」を立てた。その中で「人間とは何か?」という最大の問いに対して答えを求めていくことが、LOVOTの開発には必要だと感じ、それを追い求めていく過程を本書で追体験することができる。
「人間とは何か?」。本書内にある林氏の考えをそのまま受け入れるのも良い。しかし、林氏が本書内で読者の思考を導いていく「問い」を、自分自身の経験や体験などを思い出しながら、「共に考える」というスタンスで読み進めることで、さらに本書を楽しむことができる。
本書内で林氏が立てた「問い」は、全部で91個(カウント漏れがあればご指摘頂ければ幸いです)。傍線と「?」でわかりやすく明記している。恐らく、LOVOTを完成させるまでには、もっと多くの「問い」があったに違いない。我々が日々暮らしていく中では思いつかないこの「問い」に対して、能動的に取り組んでいくことをおすすめしたい。
本書での切り口は「テクノロジー」であるが、「人間とは何か?」という問いは、我々がより良く生きていくために、今もこれからも考え続ける必要がある課題である。もちろん答えはない。しかし、読者それぞれが考えることで、人類が明るい未来に向けて進んでいくための一歩になるだろう。
- テクノロジーは決して敵ではない。我々はどのように向き合い、利用をしていくのか。
「温かいテクノロジー」。使い方次第でテクノロジーは人間を、その心を支えることができる可能性がある。そのためなのか、本書を読むことで、LOVOTを愛おしく感じることになるだろう。実物を触ったことすらないのに。むしろ欲しくなるはず(筆者には高価なのでなかなか手がでないのだが)。
日々をなんとなく過ごすのではもったいない。小さなことに対しても疑問を持ち、それを考え抜くという習慣を身につけると、きっと自分の人生が面白い方向に転がっていくだろう。本書を読了して、自身の生き方を改めるきっかけにもなった。
②本書から学んだこと(フレーズ)
※本書内では異なったニュアンスで用いられているところがありますが、本書を読み進めていく中で筆者が感じた、考えたことを記載します。
- 人類も動物もAIも、直感を磨くには十分な経験が必要
「直感は大量の経験や情報から、規則性を適切に見つけること」と林氏は語っている。現実の仕事(業務)でも多くの経験を積むことで、先を読むことができ、仕事の質が各段に上がる。つまり、どのようなことでも「経験すること」は貴重であり、チャンスがあれば、何でも積極的に挑戦することが大切。
- 『ChatGPT』は、一定の人にとっては最強のアシスタントとなる
林氏は、「正解を出す機械」というより「パターンを提示する機械」だ、と本書で言っている。世界中にあふれる情報、そこから得られる「経験=パターン=直感=アイディア」を我々人類に与えてくれる「相棒」であり、想像力を広げるためのアシスタントとして利用すべき。決して「答え」を求めてはいけない。決めるのは我々人類だから。
- 足りない部分があるからこそ、ぼくらは手を差し伸べたくなり、コミュニケーションが生まれる
- ポンコツさが愛を育む
上司部下の関係。敢えて上司が自分の弱いところを見せる。それにより、部下が親近感をもって接することができるようになる。完璧な上司である必要はない。壁を取り払うことでコミュニケーションが取りやすくなる。その話に近いものを感じた。
- わかっているふりは、相手がそれに気づいた時に信頼を損ねる
- 「わかってもらえた」という気持ちは大きな喜びだからこそ、裏切られた失望も大きくなる
仕事上で「知ったかぶり」は厳禁。特に相手が年長者であればあるほど、相手の経験が上回り、簡単に見抜かれる。LOVOTは敢えて言葉を話さないことを選択したが、人間はそうはいかない。人間は、聞くは一時の恥聞かぬは一生の恥。これが正解ではなかろうか。
- 言葉は人類にとって、唯一でも、もっとも信頼できるコミュニケーション方法でもない
「人類はウソをつく生き物なので、言葉以外の情報が重要になる」と本書内にある。平気でウソをつく人も世の中には多い。言葉以外の情報から判断をするには、やはり、経験が必要。前述にも同様なことを記載したが、何事にもチャレンジをし、多くの経験をすることが大切。
- 「本物」も「信じる」も、その人の主観的な期待に沿っているか否かで決まっている
「信じる」に対して「裏切られた」という感情が生まれる。これは相手が信じていた「期待」に応えることができなかったから。その「期待」は「信じる」と言った相手の主観で決まる。つまり、冷たい言い方になるが、期待をしなければ裏切られることはない。部下育成のときに役立つ話。
- 大切なのは、これまでと変わらず、立てた問いに基づく探索と学習をやり切る「試行力」です。
思考力ではなく試行力。本書のなかで「やってみる」ことの重要性が語られている。AIの得意とするものは膨大なデータからパターンを映し出すこと。つまり、AIが得意とする能力を活かすことで、我々人類はより深く思考することを何度も試行できるようになる。その結果、成功するまでやり続けることが、今よりも楽になる。AIを、テクノロジーを味方につけることが次の進化に繋がる。仕事が奪われるのではない。
- できないと思った瞬間にすべてが終わり、できると思った瞬間にすべてが始まる
ビビっときました、このフレーズ。林氏がLOVOTを生み出すまで、多くの苦労を重ねてきたからこそ出てきた言葉。本書の終盤に出てくるからこそ、より一層深みを増しているのだと思う。AIやテクノロジーはパターンを示すことはできるが、決めるのは人間である。挑戦するのかしないのか、誰かがきめるのではない、すべては自分次第である。
- 先人たちは、地球上でだれ1人として正解を知らない問題を解く旅をしてきた
そして現代に生きる我々もその旅の途中にいる。人類として、これからも旅を続けようと思う。
3.お知らせ
筆者はリタイア60の名前でSNSをはじめとした発信活動を行っています。ご興味がある方は是非ご覧ください。