1.書籍概要
- 書籍名:おじいちゃんが教えてくれた 人として大切なこと
- 著者名:アルン・ガンジー(桜田直美訳)
- 出版社:ダイヤモンド社
- 価格 :1,600円+税
- 発行日:2024年6月11日 第1刷発行
【書籍帯コメント】
- 世界が涙し、深く考えさせられた11の「生き方」のレッスン
- 「人としてどうあるべきか?」の答え
- インドの賢者ガンジーが12歳の孫に語った「自分」を正しく変えるヒント
- 「怒りは賢く使いなさい」
2.読書感想文
①全体所感
ガンジーに関する書籍は数多く存在する。その中でも、この書籍は現代と過去の違いをうまく融合することによって、読者に分かりやすくガンジーの教えを説明している。アルン氏が祖父ガンジーから教えを受け、正直に感じたことを記載することにより、偉大なガンジーを身近に感じることができる。だからこそ、素直にガンジーの教えを取り入れてみようと思うことができる。良い意味でガンジーの教えが希釈されている。
そして、ノンフィクションのようにガンジーとのやり取りが明確に記載されているため、情景をイメージしやすいことも、この書籍の読みやすさのひとつである。そのため、書籍に没入することができるので、300ページを超える書籍だがあっという間に読了することができる。ここまで読みやすい自己啓発本はなかなか目にすることはない。
いくつかの自己啓発本を読んできたが、この書籍もそれらに通じるものがある。7つの習慣。人を動かす。どんなに時代が変わろうとも、変わらないもの、変えてはならないものが、人間にはあるのだろう。
今回の記事では書籍内で「太字」になっている箇所をできる限り避けてフレーズをピックアップしようと思う。気になる方は、実際に書籍を手に取り、自分の目で確かめてほしい。「良い本に巡り合えた」きっとそう思える書籍である。
②本書から学んだこと(フレーズ)
- 相手の考え方を理解し、許すことができるのが、本当の強さの証明だ
相手の考えを理解するためには、相手の立場になることが必要不可欠。その人の視点に立つことを、7つの習慣では「パラダイムシフト」と呼び、多くの書籍やビジネスシーンで使われている。ガンジーはさらにその前に伝えていたということだろう。相手の立場になることだけでも難易度が高いが、さらに「許す」というのはより一層難しい。ただ「本当の強さ」の意味をここで理解し、常に心がけるようにしよう。すぐにできなくても、「そうだ、ガンジーが言っていた」と思い返せば、現代社会において、取り返しのつかない事態に発展することはまずないだろう。
- 私たちには、自分の反応を自分で決める力がある(太字)
喜怒哀楽。外的要因の影響によって自分が動かされていると感じることが多いだろうが、どれを取るかは自分が選択をしているのだ。これも7つの習慣で、実例を交えて取り上げられていた。自分の反応ひとつで、人間関係は良くも悪くもなる。感情の赴くままに怒りをぶつけても良い結果にはならない。一度立ち止まり、お互いにとっての最適解をみつけることを心がけよう。反射的、攻撃的な態度は相手を傷つけるだけでなく、自分をも傷つけている。怒りをあらわにする前に、立ち止まる習慣。これがなかなか難しいのである。
- 自分にとっていちばん大切なことを見つけ、たとえ世の中の流れに逆らってでも、その大切なことを守るために立ち上がることのできる人が、本当の意味で強い人だ
ここは注意喚起をしておきたい。誰しもが「自分は正しい」と思っている。そして自分にとって大切なことを守ろうとする。世の中の流れに逆らってでもというのは、ガンジーだからこそ、つまり、人格者だからこそなのだ。人格が備わっていない状態でこれを実践すると、わがまま、迷惑な人間になるだけだ。根底に人格があるからこそ、大切だとおもうことが世の中のためになる。土台である人格を鍛え上げるのが最優先であるということを忘れてはいけない。
- 周りに合わせているだけでは、変化を起こすことも、世界をよりよい場所にすることもできない
日本には古くから「同調圧力」が根強く残っている。多様性を受け入れようという言葉はよく耳にするが、実際の社会は悲しいほどに冷たい。「出る杭は打たれる」ということわざがあるくらい、少しでも周りから外れると叩かれる。叩かれても構わない、そう思えるくらい強く大切に思えることがある人であれば同調圧力社会と戦うことはできるだろう。そう、だからこそ真の意味で強い人間にならなければならないのだ。
- 意識を内側に向け、世界にとって重要なこと、私自身が自分や他の人たちのために達成したいことをなどを考える
瞑想、つまり、ひとりで考える時間をつくること。情報化社会になって久しいが、この世の中には情報が溢れかえっている。そして、その情報も正しいものとそうでないものが混在している。SNSでも詐欺まがいの偽情報やフェイクニュースが垂れ流されている。外から受ける情報や刺激に対して、反応的に動くのではなく、自分の中で消化するために考える時間を持つようにしよう。即座に対応しなければならない案件というのは思いのほか少ないものである。焦ることはなにひとつない。むしろ、急いては事を仕損じる。
- 地位やお金に関係なく、人の価値を認めることができるのは、自分自身の価値を認めている人だけだ
「自分の価値」をきちんと理解することが大切だとアルン氏は言う。ただし、お金や物質的な豊さ「だけ」で自分を含めた人を判断してはいけないとも言っている。お金や物質的な豊さが悪というわけではなく、これらはあくまで何かを成し遂げるための手段であったり、途中経過であるはずだ。「何か」という目標を忘れてはならない。これを忘れると空っぽの中身に対して厚化粧を必死にしているだけに過ぎなくなる。
- 誰かにウソをつくと、自分に対してもウソをつくことになる
- ウソで手に入れた勝利は一瞬で消えてしまう
- ウソを捨てて、真実だけを語るようにすれば、人生を変えることができる
ウソは良くないというのは、この世に生きる誰もが「知っている」こと。しかし、人間は平気でウソをつく。多くの人は「これは正しいこと」と自分に言い聞かせる、真実から目をそらすためにウソをつく。しかし、ウソを通して手に入れたものは、案外価値がそこまでないと、後になって気がつく。その瞬間は、自己の欲求を満たすための行動かもしれないが、その価値は永くは続かず、むしろ、ウソが後からバレるリスクしかない。そしてそのリスクに怯える日々を過ごすハメになる。バレたら最後、他者から見られる自分を自分自身で貶めることになる。ウソは無駄なことであり、マイナスしか生み出さない。ウソをやめて、真実と常に向き合うことが、人生を変えていくための最短ルートである。
- 小さな行動であっても、積み重なれば大きな変化を起こすことができる
- すべての行動は、後から何倍も大きくなる
言われると「そういうものか」と思ってしまうが、身をもって実感するということは少ない。日々の積み重ねが未来の自分を作る。積み重ねの中で一番意識すべきことは「時間」と「日々の判断」である。時間は限りある資源であり、取り戻すことはいくら大金を積んでも無理である。そして、気づかないような小さな判断を毎日行っており、それによって今の自分が形成されているからこそ、毎日の小さな積み重ねが1年後、2年後に大きくなって成果としてあらわれてくる。一朝一夕で大きなことを成しえるのは難しい。まさに、ローマは一日にして成らず、である。
- 子供は教科書よりも、むしろ教える大人の人格や行動から学ぶことのほうが多い
子供にかぎったことではなく、組織内での新人や後輩も同様、先輩や上司の人格から学んでいるだろう。何もしない上司から学ぶことはひとつもない。口先だけの人間から学ぶことはひとつもない。子供と同じように、大人になってもその姿勢は変わらない。もし子供に「勉強しなさい」と小言を言うのであれば、まずは自分が日々勉強しているかどうかを振り返るべきだろう。親だから、大人だから勉強しなくて良いということはない。日々学ぶことは多くある。
- 自分に自信がある人なら、他の人の才能や能力を認め、賞賛することができる
本書では「差別」という観点から語られているが、会社組織にいるときにも同じことが言えるだろう。悲しいことに、弱い組織には、他人を貶める人材が山ほどいる。粗探しをして非難する。ややもすれば、あることないことをでっち上げ、噂話で盛り上がり、結果として他人の評価を落として自分を上げようとする。実に悲しい人間の集合体なのだ。ガンジーが言うように、他者を認め、賞賛できるようになるためには、実はとても強い内面、築き上げられた人格が必要になる。また、自らの立ち位置を客観視できることも必要だ。他者と比べて秀でている、劣っているという考えは必要ない。自分を日々磨いくことで、他者の持ちえない何かを築き上げられるはずだ。そしてそれが自信に変わっていく。
- 謙虚な心を持ち、自分とは違うものの見方や考え方を尊重すること
ガンジーが提唱する非暴力へのアプローチ。他人にレッテルを貼らず、違う意見を受け入れるということだが、簡単なことではない。自身の人格が形成されていなければできないことだろう。では、この反対の態度とはどのようなものだろうか?自分を強く見せたい、自信を持ちたいという気持ちが悪い方向に向かっている状態だろう。この気持ち自体悪いことではないが、それを他者に向けることは良くない。自らを磨き上げることにベクトルを向けるべきである。
- 人は批判されると意固地になり、攻撃的になる
- 本当に変わることができるのは、自分で尊敬できるお手本を見つけ、その人のようになりたいと思ったときだけだ
人を批判することは良くない、ということは誰でも知っている。しかし、批判してしまう。その背景には「自分を守りたい」という気持ち、つまり、自分の弱さがある。相手に助言しても何も行動に起こさなくてイライラするときもある。これは、相手がその助言を受け入れるかどうかの判断をした結果である。受け入れなくてよいという判断だ。受け入れようと思うときは、その助言をする人を心底尊敬している、つまり、真のメンターだということ。もし自分が真のメンターになりたいのであれば、他者ではなく自分に意識を向けてみよう。
- 感謝の気持ちは外側からではなく、自分の内側から生まれる
ここまで、何かと「自分」対して厳しくあるというニュアンスになったのだが、あまりにもストイックになり、自分にないものばかりに目がいき続けると、息切れする。本書ではこれを「自分に対する暴力」と表現している。一日だけで良いので、ふと立ち止まり、自分の周りに目を向けてみるとよい。意識していなかった、些細なことに意識が向く。そしてそのひとつひとつに感謝をしよう。この感謝の気持ちが自分を救ってくれる。人生で感謝の気持ちを増やせば、態度が変わり、世界を見る目も変わる、とのことだ。これを習慣にしていくことが良さそうである。
- 人の真価が試されるとき、自分の強さを証明するのは、暴力ではない、善のために行動することだ
「善」や「正義」。これは何を基準にするかで大きく変わる。自分にとっての「善」や「正義」が世の中のそれになるという保証はどこにもない。自分がそう思っていても、世の中に受け入れられなければ、真の意味での「善」や「正義」ではない。では、どうすれば「善」や「正義」を誰にも受け入れられるものとして自分の中に定義づけするのか。そこに正解はないと思う。十人十色。すべての人が認める「善」や「正義」は存在しない。ただ、大多数が認めるそれは間違いなくある。そのためにも、何事に対しても、ひとつ呼吸を入れて、俯瞰して眺めてみることだろう。落ち着いて行動しよう。世の中はそこまで自分の答えを早く求めているということはない。
- 弱点を克服して長所に変えるには、まず弱点を知らなければならない
決して悲観的に考えることはない。完璧な人間などこの世に存在しない。自分に弱いところ、ダメなところがあって当たり前。まずは謙虚にそれを受け止めて理解すること。そして、日々、その弱点に向き合い、何かしら克服した、また弱点が出てしまったと反省できた、今日だけは我慢できた、など、ほんの少しの自分の変化に気付くことだろう。明日になって完璧に弱点がなくなるということはない。日々の積み重ね、日々の自分の判断で未来の自分が作り上げられる。一日一歩、三日で三歩、三歩進んで二歩下がる。それでも一歩は進んでいるのだ。
- 本当に大切なのは見た目ではなく、強い信念を持って行動することだ
ガンジーの教え。この一文をどう解釈するかは、読む人によって変わることだろう。私は以下のように解釈した。他者の評価ばかり気にしても仕方ない。誰かに評価されるための行動に意味はない。同調圧力の社会を気にする必要はない。自分がやりたいこと、叶えたいことに向けて邁進するのみ。そして何事においても誰かの責任にする必要はない。見た目を気にしないのだから、自分に起こることすべてに自分が責任を持てばよい。そして後悔をするのであれば、次は同じ過ちを犯さなければよい。自分の中に、確固たるウォンツを持ち、鼓動していこう。
3.お知らせ
筆者はリタイア60の名前でSNSをはじめとした発信活動を行っています。ご興味がある方は是非ご覧ください。